先日、横浜市医師会が主催した『人生の終末期を考えよう』というシンポジウムに参加して来ました。
先着280名でしたが、会場は満席で関心の高さが伺えました。
5名のシンポジスト(大病院医師・在宅医師・弁護士・看護師・特養)により、それぞれの立場から「どのような終末期を選択するのか」という意見が発表されました。
5名の方々の共通する意見としてあげられたのは「ACPアドバンス・ケア・プランニング(事前ケア計画)」を作っておこうというものでした。
『ACP』とは将来の状態変化に備えて、患者・家族とケア全体の目標や具体的な治療・療養の方法を話し合うプロセスのことです。これには「心肺蘇生などの延命処置を行わない」などを指示する、『リビングウィル・事前意思表明書』を含みます。
医療決定に関する「リビングウィル」の実践は日本ではたったの1%しかないそうです。それと比較してアメリカは40%・ドイツは12%と、文化の違いはありますが、どのように死を迎えるかということを先進国はよく考えている結果でしょう。
まず、日本人の平均寿命は男性が80.2歳、女性が86.6歳です。それに対して、介護を必要とせず自立できる健康寿命は男性が70.6歳、女性が75.5歳。つまり、男女とも約10年間は何らかの形で介護を受けているという現状です。
次に、終末期の療養場所についてアンケートを取ったところ、約6割が何らかの形で自宅を希望していますが、横浜市では7割の方が病院で息を引き取り、自宅とその他施設で亡くなった方を大きく上回っています。
一方、病院側でも2025年にはリハビリや在宅復帰に向けた医療のためのベッドが大幅に不足すると予測され、横浜市としても在宅医療の環境整備をどんどん進めていきたいとのことでした。
さて、医療機関でも、在宅療養でも亡くなる原因の1位は「がん」でした。そして「がん」の特徴として他の病気と比べて比較的長い間、体力や機能が保たれ、最期の2ヶ月くらいで体力が急速に低下します。どのような症状が出るかというと、・動けなくなる・食べられなくなる・飲めなくなる・話ができなくなる・眠る時間が増えるなどです。
この時期に入ってくると医療が有効な場面が減っていきます。
・輸液(点滴)の必要がなくなる
・薬を中止する
・身体の変化を理解し、過剰な反応はしないようにする
・その人の思いを受け止めていくということが中心になります。
しかしながら、終末期を向けて様々な選択・判断・決定が迫られます。その時にご本人があらかじめ意志を家族・医療者・介護者と共有しておけば混乱が避けられます。そして書面に残しておき、その都度見直しておけば焦らず過ごしていけます。
では、どのように書面に残していくのか。まず、ポイントは患者様に関わる人々がすぐ共有できるよう、患者様の枕元にノートを置くことがポイントだそうです。そして書く内容は「知っておいてほしいこと」何でも良いそうです。
例を挙げると
・終末期に向けて私が大切にしたいこと。(例えば来春の息子の卒業式を見たい・なるべくトイレを使いたい・孫の教育のためのお金を私に使って欲しくない・・・など)
・これはして欲しくないということ。(入院したくない・痛い検査はしたくない・・・など)
・心配なこと・困っていること。(家族のこと・経済的なこと・・・など)
・医師からの説明を一緒に聞いてほしい人
・自分で決めるのが難しくなった時、自分に代わって決めてくれる人
・日記や自分の思い(家族に向けての感謝の思い・・・など)
今は書店でエンディングノートが販売されていますが、オススメとして「私の生き方連絡ノート」(発売元は有限会社EDITEX)をあげられていました。もちろんまっさらな大学ノートに書く方も沢山いらっしゃいます。
今回のシンポジウムに参加して、私もエンディングノートを書いてみようと思いました。おそらくこれを書くにあたって、1日1日を大切にしよう、家族や友人を大切にしよういう気持ちと、自分が何をすべきかが見えてくると思います。
自分がどのように生きるか、何をするべきか。これを文書に残していくことは自分や周囲の人々にとって、終末期を迎えても「生きていくための財産」に変わるように思いました。
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posted by 本間ようこ at 13:01|
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