この講演はがん治療に対してどの様な研究が進んでいるのかを発表してくれる講演会です。
まずは、がん治療にAI(人工知能)が使用され、格段に治療が進んでいるという発表でした。東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの宮野悟先生による発表でした。
がんに罹患すると、特定のDNAに変化が見られます。欠損したり、形が変わったり。そのデータを集めて、スーパーコンピューターで解析し、がんの診断や最適な治療に生かそうというものでした。
アメリカでは女優のアンジェリーナジョリーさんが遺伝子のBRCA1に変異があることが分かり、データから乳がんリスクが87%あったため、予防的に乳腺切除をしました。
そしてがん細胞は免疫から逃れるためにPD-L1という遺伝子の構造を変化させる働きがあることも分かっています。そこからがん診断のためにスーパーコンピューターでの解析は、医療を大きく変える可能性を秘めています。今までの医師の経験に頼る治療から更に安全に効果的ながん診療が進むはずです。
現在、厚労省でも数十個の遺伝子についての解析を保険でできる様に動いてくれているとのこと。これが認定されればかなり早期のがんでも診断ができる様になります。
続いて神奈川県立がんセンターの越川直彦先生の発表でした。次世代腫瘍マーカーとして3つ挙げられました。
1つ目は神戸大と島津製作所が大腸癌の早期診断の目印となる化学物質を見出したとのこと。感度・特異度とも96%を示し、高確率での診断が可能なのだが、解析する機械が高価で、まだ簡単にできないのが現状だそうです。
2つ目は国立がん研究センターが血中のApo2アイソフォームという脂肪代謝に関わるタンパク質が早期膵臓癌の検出に高い有用性を持つことを明らかにし、すでに測定キットを開発されたとのこと。このことから膵臓癌は進行してから発見されることが多いですが、早期発見が可能になります。
3つ目は神奈川県立がんセンター、高知大学、東京大学医科学研究所で膀胱癌を早期に診断可能な尿中の新たな腫瘍マーカーを発見し、測定キットも開発したとのことです。
膀胱癌の検査方法は膀胱鏡を入れるため、かなり苦痛を伴います。これを楽にするために尿検査で確認できるキットを開発し、再発防止にも役立っているそうです。
最後の発表は神奈川県立がんセンターの笹田哲朗先生でした。主に神奈川県立がんセンターで受けられるがん免疫療法の説明でした。
免疫療法は第4のがん治療法と言われていますが、人間の治癒力を利用して治療する方法です。免疫細胞を活性化して、がん細胞を殺傷させます。
免疫療法は小さなクリニックでも自由診療で行われていますが、その様なクリニックで受診することは危険であるとはっきりおっしゃっていました。県立がんセンターでは臨床試験や治験で免疫療法を行っていますが、年間1200件ほど問い合わせがあり、その中で実際に要件に当てはまり、受けられる方は55件とのことでした。
それを聞くと、小さなクリニックに行ってしまうのも仕方ないことだとも思いました。。。
県立がんセンターで免疫療法を受ける際、先進医療として受けられると大体6回で60万円ほどだそうです。
また県立がんセンターは放射線治療の中でも陽子線よりも効果の高い重粒子線治療も導入されていて、約350万円くらいで治療できるとのこと。
県立がんデンターでは膵臓癌の治験を現在募集しているとのことでした。進行が早く、治療が難しいがんほどがんセンターで受診することが望ましいだろうと、講座に参加して思いました。


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