無くなる11月15日まで父も家族も必死で戦いました。思い出すととても辛いのですが、ふと納棺の時に触れた父の手を思い出します。
父は東北で亡くなったので、縁あって笹原さんという納棺師の女性に納棺をお願いすることができました。
笹原さんは『おもかげ復元師』という本を出版されています。
納棺は緊張の時。故人をゆっくりお世話できる最後のチャンスです。その大事な時を家族に寄り添い、語りかけ、家族が故人に思い残すことがないよう、上手に導いてくださいました。
印象に残っているのは「皆さん、手をよく思い出すそうです。」というお話をしておられました。確かに、私も亡くなった父の手を意識することなく頬にくっつけました。それも心が落ち着いていたからこそできたのだと思います。
父はなくなる前は体重が40キロ台に落ち込み、「鏡を見るのが嫌だ」「人に会いたくない」と母には言っていたようです。娘の私には言いませんでしたが。
痩せてしまった父を納棺の日にふっくらも出してくれたのが笹原さんでした。落ちてしまった眼球周りや頬を、脂肪や綿花を使って元のふっくらした顔に戻してくれたのです。その手順は家族がびっくりするといけないというので、身内は一度部屋を出て、処置が終わった頃呼び戻されました。
正直なところ、私は痩せた姿でも父は父だと思っていたので良かったのですが、何よりも喜んだのは母でした。やはり父はその苦悩を母にだけは細かく打ち明けていたので、痩せた父を見て母も相当苦しかったのでしょう。母の一声は「これで元気な顔で天国行けるねえ。」でした。「納棺の仕事は家族の心を癒す大事な仕事だ」と心に深く刻まれました。
実は笹原さんが本を出版されていたことは知らず、後で兄からその本をプレゼントされました。ただ、私は父のことを深く思い出すにはまだ辛く、父の病気が発見されて1年経った今、ようやく本を開く気になり、ただただ、泣きました。
辛い過去を思い出しましたが、「暖かく見送ってあげられて良かった」とも思いました。
後悔なく、1日1日を大切にしようと思える本です。
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ラベル:納棺