
浅生鴨さんが書かれた小説です。舞台は視覚障害者のスポーツ競技で夏バージョンの『マラソン編」と冬バージョンの『スキー編』で成り立ちます。
私がずっと感想を書けなかったのは、私が元盲学校の教員であったからかもしれません。
私は目が見え、身体的なハンデはありません。ひょんな事から盲学校で鍼灸マッサージを教えることになり、10年勤めました。
その10年間、それまでより「人への接し方」に関して迷い、難しいと感じ、右往左往する日々であったと感じています。
まず私は目が見えます。視覚障害の方と話すときは「想像力」を駆使しなければなりません。
人間の脳は80%が視覚から情報を得ると言われています。よって、「あの赤い乗り物」とか、「あっちにあるよー」とか、何気無い会話が相手には通じないので「見えないことを想像しながら」言語によって具体的に表現しないと伝わりにくくなります。
「こそあど言葉」や色を用いた会話が続くと視覚障害を持つ方はカチンとくるのは当たり前だと思います

私は教員であるのに「ふとした瞬間」目に入ったものを考えなしに口走ることもあり、そのたびに反省してました。と同時に、常に想像していることに疲れてしまったこともありました。
「視覚障害を持つ人たちに知識を伝える」ことを生業としていた私でも悩むことは多かったので、近くに障害を持つ人がいない場合は余計に「対応の仕方がわからない」のも当然と思います

私の経験から言うと「目標を持っている、好きなことがある人に関しては障害があろうとなかろうと、必ず手助けしたくなる、知りたくなる」ことだけは確かだと思います

『伴走者』に書かれている2人の主人公は少々癖があって、それに振り回される伴走者の様子も書かれているのですが、嫌な感じが全くありませんでした。なぜかな?と思ったところ、『主人公に目標や好きなこと(ハマること)がある』からだ!と思い至りました。
一生懸命やる人にはついつい支援したくなってしまうもの。これは人として当然の感覚だと思います。
「一生懸命することの大切さ」を丁寧に実践していこうと思った一冊でした

